Last Update: Sep. 26, 2015Since: Nov. 11, 2011
香川県さぬき市の最北端に位置する半島。西側の鴨庄湾と東側の小田湾を区切っている。 半島の長さは南北方向に約2.5kmの細長い半島になっている。海岸線はこのあたりの半島(屋島や庵治半島)の特色をしており、 殆どが断崖で砂地は少ない。
この半島は向い側には小豆島があり、この海峡を昔から船舶の往来が頻繁にあることから見張り所や防御の砲台が築かれていた。 東側の山稜部では、白色凝灰岩(白粉石)の石切場跡があり、古代から白粉石を各地に運搬していたと考えられる。 大串半島に今でも見ることができる史跡を紹介する。
バベ木の端から眺める“鴨庄湾” | 海釣公園から見る“灯台と長ぞわい観音" | 海岸の岩礁にある“長ぞわい観音" |
@狼煙場跡 山の上につくられた、たき火によって非常事態を知らせる場所。江戸時代中期以降に高松藩では、非常警報、海上警備、船との連絡のため周辺の岬に狼煙場を築いた。狼煙筒は内径 3m、外径 6.2m の円筒形で高さ 4m の地石を積み重ねた見事なもので、ほぼ完全に残っているのは極めて 珍しく貴重なものである。 グリーンヒル大串の増築に伴い、元あった場所から北へ約 200m の現在地に移された。 | ||
A砲台跡 長ぞわい観音へ行く途中の雑木雑草が繁ったところに石垣が残っている。江戸時代末期に高松藩が黒船到来による非常事態に備えるため設置したといわれているが確認されていない。この場所は切立った断崖上にあり、平坦地になっており砲台のために整地されたとも考えられる。 |
B長ぞわい観音 標識に従って海岸の方向へ下ると、正面に7.2m 12 等身の観音像がある。1988年に建立されたもので、 元の"長ぞわい観音"は、急な崖道を5min程降ると、海岸の岩礁の上にある。船舶の航行安全のために地元の漁師が建てたといわれており、海岸線の赤い灯台の西側に見ることができる。 | |
C 大串石切場跡 砲台跡の近くの丘陵にある。白色凝灰岩(白粉石)の岩層で、ここの尾根上や谷の壁面には採石に使用した工具の痕跡が無数にある。 切り離されずに残されたままの未製品もある。採石された石材は谷を利用して海岸まで運ばれた。 | ||
D 長者が谷遺跡 海釣公園の砂浜奥壁に礫混じりの土層がある。この土層が"長者が谷遺跡"で、縄文土器や弥生土器、塩を濃縮するときに使用したと 考えられる製塩土器が露出している。昭和49年に試掘調査が行われた。 | ||
E 茶碗石採石跡 第2次大戦中に茶碗の原料となる硅石を掘り出していた。硅石は、主にシリカ(二酸化珪素SiO2)からなる鉱物や岩石の総称で、 そのなかでも石英(quartz)は二酸化ケイ素 (SiO2) が結晶してでできた鉱物で、六角柱状のきれいな自形結晶をなすことが多い。 中でも特に無色透明なものを水晶といわれて珍重されている。水晶がこの場所から出るという噂が話題を呼んだ。 この場所は、良質の水が出るため、最近まで大串温泉の源泉になっていた。 |
道脇で見つけた"アキグミ" アキグミ(秋茱萸)はグミ科グミ属の落葉低木で果実は食用となり、果実酒などに利用される。北海道の道央以南、本州、四国、 九州などに広く分布し、日当たりの良い河原や林道脇によく生える。 | |
F バベ木の端(はな) 第2次大戦末期に日本海軍は石原汽船のタンカーを神戸で護衛空母に改造していたが、空襲のため鴨庄湾に隠すことになった。 英軍はいち早く発見して、爆撃や機銃掃射を加えた。この場所には、バベの木が群生しており鴨庄湾の眺めが非常に良い。 眼下にしまね丸が座礁していた。 |
護衛空母(特1TL型)"しまね丸"の通信用マスト 座礁した"しまね丸"の通信用マストは、近くにある新開消防屯所の警鐘台に利用されている。英軍の艦載機スピットファイア (Seafire)による機銃掃射で被弾した痕跡が数箇所みられる。 | |
← Seafire(Spitfire) しまね丸 → |
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さぬきワイナリーから小田への県道137号をしばらく行くと右側に標識がある。標識に従って斜面を 3min 登ると摩崖仏が見えてくる。この摩崖仏は、樫村志度町長時代に、長尾前山の蓮井一郎さんが精魂こめて花崗岩の巨石に彫り込んだもの。
正面に不動明王像、その側面に如意輪観音像があり、顔の表情は蓮井さんの作品個性が色濃くでている。数百年後には立派な文化財になることを期待したい。
不動明王像 | 如意輪観音像 |
Comment :
一般論として大串半島は自然と文化財に富んだ素晴らしいロケーションで、道路も整備されており、子供連れでも一日十分楽しめる。 一方文化財の史跡については、見学ルートの整備が遅れており、簡単には現場へ到達できない。
大串石切場への見学路、砲台跡といわれている場所、長ぞわい観音から灯台へのルート(断崖の細い道)確保などが指摘できる。これらが整備されたら、大串半島の史跡を訪れる人が確実に増加すると思われる。
右に、とまばり峠の可愛い如意輪観音石仏を挿画した。