屋島の南嶺・北嶺

屋島logo

Last Update: December 20, 2016



メサ台地の屋島は南嶺(292m)と北嶺(282m)の2つの山からできており、この台地の周囲は殆どが峻険な絶壁である。南嶺台地で古代山城の屋嶋城やしまのきの 城門跡の復元整備工事が実施され、2016年に完成した。
屋嶋城の築城は、663年の白村江の戦いで大敗した大和朝廷が唐・新羅の侵攻に備える国土防衛の戦線であり、日本書紀に “倭国の高安城、讃岐国山田郡の屋嶋城、 対馬国の金田城を築く” とある。
完成した屋嶋城城門跡遺構を見学研修した後、ウバメガシの遊歩道を散策し景観を楽しみながら北嶺の尖端へ。尖端にある遊鶴亭からは峻険な崖の下山道を経て 県道150号まで降った。


南嶺・北嶺の地図(航空写真)



山上駐車場 ⇒ 血の池 ⇒ 屋島寺 ⇒ 仁王門 ⇒ 屋嶋城 ⇒ 談古嶺

⇒ 千間堂 ⇒ 遊鶴亭 ⇒ 北嶺岩壁路 ⇒ 洞窟 ⇒ 県道150号


《Marked by Garmin GPS》


*文化財巡りLのカット集*
修復した屋嶋城をじっくり見学した。高松市埋蔵文化財センターの学芸員による城門遺構の詳細構造について専門的な解説を聞くことができた。屋嶋城の見学のあと、 南嶺から北嶺へと好天に恵まれ屋島メサ台地を散策し、森林浴に浸りながら周辺の景観を楽しんだ。 北嶺先端の遊鶴亭からは岩壁帯の悪路を経て県道150号まで降った。

屋島寺南門屋島寺本堂屋嶋城
北嶺への遊歩道北嶺岩稜帯の登山道北嶺の降り(洞窟付近)




城門遺構logo

屋嶋城の城門遺構は標高270mの地点にあり、急斜面の岩塊を利用した天然の要塞になっている。 唐・新羅の軍船を迎え撃つには重要な場所である。
屋嶋城の城壁は山上を全長7kmに渡ってめぐらしていたと考えられ、自然の断崖絶壁を利用しており、城壁を築いたのは約1割程度の古代山城である。 城門などの遺構は南嶺のみで確認されている。



城門構造
城門入口に段差を設けた懸門けんもん構造で、高さ2.5m以上ある。城門遺構の奥には城門を突破した敵の侵入を阻み岩盤を有効利用して、 攻撃する敵を防ぐ円弧状の甕城おうじょうがある。左右の城壁は夾築きょうちく構造で築城している。 石垣は安山岩の野面積のづらつみになっている。

想像される城門

・城壁
城門の南側は内托ないたく式の城壁であり、北側は夾築式の城壁になっている。 内托とは、斜面にもたせ掛けるような構造で城外側に石積の壁がある構造。

・甕城
敵の侵入を防ぎ敵へ攻撃をする施設。城門の内側にあり天然の岩盤を巧みに利用している。近世の城にある虎口こぐち枡形ますがた と同様に考えられるもの。






・城門
幅5.4m 奥行10mの規模で、確認されている国内の古代山城の城門では最大の規模である。 城門北側には侵入する敵に横矢掛けができる張出した雉城ちじょうがあり、床面には雨水対策の暗渠の排水路溝を備えている。

・懸門
入口に2.5mほどの石積階段を設けて敵の侵入を阻んでいる。普段は梯子を掛けて出入りをし敵が攻めてきたときには梯子を外す。門を通る石積階段の通路の両側に柱穴が 確認されており、門扉のような建造物があったと考えられる。








千間堂logo

千間堂跡
屋島寺の寺伝には、鑑真が都に向かう途中に屋島に来て、一宇を建立し普賢菩薩を安置したとある。弘仁元(810)年には空海が南嶺の現在の屋島寺の地に千手院を建立し、 自作の千手観音を納めたともいわれている。 千間堂跡は屋島寺の前身といわれており、平成11年度の分布調査で芝生広場北側の森の中で基壇をもつ礎石建物跡が確認された。基壇は東西に長く40cmの高さをもち、 基壇上には10個の礎石が確認された。礎石の位置から東西3間、南北2間の建物であると考えらる。基壇東側の集石上部から須恵器の多口瓶たこうへいの 破片が出土した。出土した多口瓶は、形態の特徴から9世紀後半から10世紀前半のものと考えらる。 礎石建物跡北側の確認調査によると、北嶺千間堂跡の伽藍配置は仏堂を中心に小規模な建物が点在していたと想定される。

千間堂跡調査時の千間堂跡千間堂の想像図

遊鶴亭
北嶺の北端にある。獅子の霊巌、談古嶺と共に屋島の3大展望台といわれている。320°の展望が開け、女木島・男木島・小豆島などが良く見える。良子殿下(香淳皇后)が屋島を 訪れた時、この風景を賞讃して遊鶴亭と命名した。

遊鶴亭女木島男木島

洞窟
この洞窟は19世紀初めから1926年頃まで、黒石を採掘するために掘削したといわれている。洞窟入口の横にある脇道を登ると、露天掘りの石切場が開けている。 洞窟の内部はかなり広いが、天井から滴が落下するので居住性は良好とはいえない。岩壁にはノミによる掘削の痕跡が残っている。

洞窟掘削跡面白い姿勢の木


【参考文献・データ】
  1. 高松市歴史資料館 『屋島ーシンボリックな大地に刻まれた歴史ー』  高松市   2014
  2. 文化庁文化財部  『月刊 文化財』 631号(古代山城の世界)  第一法規  2016
  3. Takamatsu City Official Web Site;    https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/4727.html
  4. 高松市埋蔵文化財センター 『古代山城 屋嶋城』 667  高松市  2016