Last Update: Apr. 16, 2014
所在地さぬき市造田是弘1248
山 号施薬山 悲田院
宗 派真言宗善通寺派
本 尊薬師如来 Bhaisajya-guru
文化財重要文化財[聖観音坐像]


さぬき市造田是弘にある願興寺は「宝蔵院古暦記」によると天長7年(830)、宝蔵院の徹円が建立し、衆病を救うため 本尊薬師如来を安置したとある。しかし、旧寺蹟(現在の寺より南200m)から出土した瓦から奈良時代には建立されていたと 考えられる。宝蔵院古暦記の記述は再建された年代であろう。
2010年11月、本堂が新築された。内部中央にには祭壇があり、新しく描かれた金剛界曼荼羅図が左側に、 右側に胎蔵界曼荼羅図が掛けられている。両サイドには真言八祖の画像がある。 すべてが新しく、木の香りが濃い素敵な本堂との印象が残った。
この寺の背面は、石鎚山の山麓になっており、ここに西国33観音霊場(ミニ霊場)が開設されている。 西国三十三所或は坂東三十三所などの観音霊場の巡礼を望む者は多いが、遠く易しいものではなかったので、 巡礼を諦める者も少なくなかった。明治時代に、この寺に設置された遥拝場により観音菩薩の慈悲を載けるようになった ので、多くの人々がお参りに来るようになった。なお、石仏の寄進者は近郷近在の人々である。




GPSによる西国33観音霊場のTrack Log新装なった本堂"

西国33観音霊場の石仏

1番 那智山
如意輪観音
2番 紀三井寺
十一面観音
3番 粉川寺
千手千眼観音
4番 横尾寺
十一面千手千眼観音
5番 葛井寺
十一面千手千眼観音
6番 壷坂
千手千眼観音
7番 岡寺
如意輪観音
8番 長谷寺
十一面観音
9番 南円堂
不空羂索観音
10番 三室戸寺
千手観音
11番 上醍醐寺
准胝観音
12番 岩間寺
千手観音
13番 石山寺
勅封二臂如意輪観音
14番 三井寺
如意輪観音
15番 熊野
十一面観音
16番 清水寺
十一面千手千眼観音
17番 六波羅蜜寺
十一面観音
18番 六角堂
如意輪観音
19番 革堂
千手観音
20番 善峯寺
千手千眼観音
21番 穴太寺
聖観音
22番 総持寺
十一面千手観音
23番 勝尾寺
十一面千手観音
24番 中山寺
十一面観音
25番 清水寺
十一面千手観音
26番 法華山
聖観音
27番 写寺
六臂如意輪観音
28番 成相寺
聖観音
29番 松尾寺
馬頭観音
30番 竹生嶋
千手千眼観音
31番 長命寺
十一面千手観音
32番 観音寺
千手千眼観音
33番 谷汲寺
十一面観音
信州 善光寺
阿弥陀三尊


乾漆聖観音坐像

聖観音坐像  願興寺の乾漆聖観音坐像は、高さ約80cmの等身大で、琥珀色のきれいな光沢をはなっている。 製作年代は8世紀後半の天平時代中期といわれている。天平時代の脱乾漆造仏像の代表は興福寺の阿修羅像で、願興寺の聖観音像の 製作のほうが新しいといわれ、奈良の藤原文化が香川のこの地に及んでいたと考えられる。中央から離れたへき地で確認されている 脱乾漆像は、願興寺(聖観音坐像・さぬき市)、美江寺(十一面観音立像・岐阜市)、龍華寺(菩薩半跏像・横浜市金沢区) のみである。
 仏像の主な製法には、金銅(こんどう)造、鉄造、塑造、乾漆造、石造、木造などがあり、乾漆造には脱乾漆造と木心乾漆造がある。 脱乾漆造は、木心に土で概形を作りその上に麻布を何枚も貼り、その際に漆で定着させる。乾燥したら背面に切り口を入れ、 中の土をかき出す。空洞になった胴内に木枠をいれて形態を安定させ背面を縫い合わせる。仕上げは木屎漆(こくそうるし)を 塗りながら整形する。乾漆造は高価で、金に匹敵するといわれ、奈良時代に最も隆盛したが、平安時代初期には徐々にすたれて、 木彫造に移行した。
聖観音坐像(重要文化財)脱乾漆造り仏像について

両界曼荼羅図

金剛界曼荼羅図胎蔵界曼荼羅図

曼荼羅図は密教に伝わるもので、密教の世界観は宇宙の総てが大日如来のあらわれであり、胎蔵界と金剛界の2つの世界像で 構成されている。大日経の世界観を画で具現化したものが胎蔵界曼荼羅(大悲胎蔵生曼荼羅)で、 大日如来の慈悲を絵図であらわしている。一方、金剛頂経の世界観を画で具現化したものが金剛界曼荼羅で、 大日如来の知徳を絵図であらわしたものである。両界曼荼羅図は密教の教化普及に用いる説話画で、長安の恵果和尚から 空海が密教の教理を相承して経典、仏像、仏画などと共に日本に持ち帰ったものである。
 上記掲載の両界曼荼羅図は、願興寺住職樫原典澄さんの夫人である樫原則子さんが心血を注いで描きあげたもので非常に緻密で 美しい。後々まで永遠に残り名を成す曼荼羅図となる予感がする。




【参考文献・データ】
  1. 『さぬき市の文化財』さぬき市文化財保護協会長尾支部 2005
  2. 香川県 願興寺 乾漆造 聖観音菩薩坐像 模刻  白澤 陽治
    http://www.tokyogeidai-hozon.com/news/news2011/0120/0120_2.html
  3. 『改定 長尾町史』上巻 1986

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